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2012年2月2日

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電子書籍メディア論 第18回

投稿者: monkeyish2010

電子書籍メディア論

  • このレポートは、EPUBで配信されたものです。今回は、ブログ転載ワークフローのテストを兼ねて実験的に公開しています
  • 取材した情報をインフォグラフィック化し、EPUBファイルにマージするテストを兼ねていますので、今回は写真等を挿入していません
  • 参考:配信されたEPUBファイルをiTunes以外で開く方法(iOS, Android)

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スマートデバイスでブログを閲覧する場合:

スマートデバイス等でブログの可読性を向上させるため、Readabilityを設定しています。[ http://rdd.me/nr3chrrk ]をクリックし、表示されるブログの上部バーの「Readability view」をクリックしてください

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電子書籍・電子雑誌の4レベルの表現方法

読者が電子書籍・電子雑誌に求めるエクスペリエンスはさまざまです。デバイスのスクリーンに最適化された電子書籍を望む読者だけではなく、雑誌をそのまま電子化したデジタルデータ(PDFなど)を欲しいと思っている読者もいます。電子書籍・電子雑誌の電子化におけるパーフェクトな手法はまだありません。どの技術も一長一短です。電子書籍デザイナーは、現状把握を怠らず、常に最新の手法に触れていく必要があります。今回は、電子化の手法を4つのレベルに分けて、現在の状況を整理していきたいと思います。

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再現性を重視したプリントレプリカ

雑誌の場合、テキストが主体の書籍よりも、図版が多く複雑なレイアウト構造を持っています。デジタル化する際、再現性を重視するのであれば、印刷されたページをそのまま電子化する「プリント・レプリカ」方式が最も有力だといえるでしょう。現在、電子書籍ストアで流通している電子雑誌は、プリントレプリカ方式が圧倒的に多く、再現性が優先されています。

プリントレプリカの種類:

  • PDF
  • PDF(+テキスト情報)
  • ラスタライズフォーマット(ページを画像にして束ねたデータ)

プリントレプリカの種類

プリントレプリカの特長は、紙媒体のデザインをそのまま継承しつつ、テキスト情報を保持していれば、検索も可能であること。リーディングシステムによっては、線を引いたり、メモを書き込むこともできます。デメリットは、データの肥大化です。どうしてもデータサイズが大きくなってしまい、ダウンロードに時間がかかるだけではなく、動作が重たくなり、閲覧に支障が出てしまうことがあります。iPadでは快適にページをめくれるが、安価なAndroidタブレットでは、ページが切り替わるまで数秒かかってしまうなど、使用するデバイスによってユーザビリティの差が出てしまいます。

プリントレプリカの肥大化

また、スマートフォンなどの小さなスクリーンでは、縮小コピーのような表示になってしまい、可読性が著しく低下します。iPadなどのタブレット専用の雑誌が多いのは、プリントレプリカ方式における最適化の限界を考慮した結果でしょう。安価なタブレットは、ページのズームやスクロール処理も重たく、全ページ読まなくてはいけない文芸書では致命的です。「興味のある記事だけ読む」ことが可能な雑誌の場合は、なんとか我慢できると思いますが、決して快適な読書にはなりません。

小さなスクリーンでは読めない

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可読性を重視したリフローコンテンツ

テキストが主体の「じっくり読ませる」書籍の電子化は、紙の再現性より、可読性が重視されます。図版の位置が変わってしまったり、レイアウト構造が消滅しても、「読みやすさ」だけは保証するという設計思想です。小さなスクリーンで威力を発揮する技術だといってよいでしょう。リフローコンテンツは、まずスクリーンに対して、適切な文字サイズを表示し、テキストを流し込みます。携帯電話の小さなスクリーンでも、字が小さくて読めないという問題は解消されます。

リフローコンテンツなら小さなスクリーンでも読める

電子書籍のデザイナーは、大半の読者がストレスなく読める「デフォルト・スタイル」を決定します。デフォルト・スタイルは、文字の大きさ、行間、余白(マージン)などの基本的なデザインのことです。このデフォルトのデザインにあわない少数の読者に対しては、リーディングシステム側の機能で調節してもらうことになります(高齢者や弱視の方なども含みます)。どんなに単機能なリーディングシステムでも、文字サイズを変更する機能は搭載されていますので、デフォルト・スタイルで対応できない場合は、読者自身による「カスタマイズ」という選択肢が用意されているわけです。

リフローコンテンツの考え方

  • デザイナーは可能な限り多くの読者を対象にデフォルトのスタイルを決定する
  • デフォルトのデザインでは支障のある少数の読者に対してカスタマイズ機能を提供する

大半の読者はデフォルトスタイルで読む

デフォルトでは対応できない少数の読者にはカスタマイズ機能を提供

小さなスクリーンのデバイスでは、プリントレプリカより「リーダビリティ(読みやすさ)」の点で勝っていることは間違いありません。では、デスクトップ環境の大きなスクリーンはどうでしょう?
リフロー処理によって、行の折り返し機能が働くのは、コンテンツの表示領域です。もし、UXGA(1600×1200ピクセル)のディスプレイで、ウィンドウを全面表示した場合、1行の文字数が過度に増えてしまい、大変読みづらい文章になってしまいます。パソコンのデスクトップであれば、ウィンドウの幅を狭めることで、回避できますが、タブレットのウィンドウは固定です。ワイドスクリーンのタブレットなどは、横向き(ランドスケープモード)にすると、読めたものではありません。

リフローコンテンツの問題点

電子書籍ストアで購入した電子書籍(EPUB)をワイドスクリーンタブレットで表示すると、この問題に対応しているリーディングシステムと、何も対策していないリーディングシステムに分かれます。私の記憶では、最初に対応したのは「Kindle for iPad」だったと思います。リフロー処理によって、1行の文字数が過度に増えた場合、2段組みに切り替えられるようになったのです(実はモリサワのMCBookはもっと早くから対応していました)。重要なのは、電子書籍のデザイナーが段組みにしているのではなく、リーディングシステム側が自動的に処理しているということです。

段組みに切り替えて可読性を向上させる仕組み

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デスクトップ環境のリーダビリティ

リフローコンテンツの特性について、もう少し掘り下げてみましょう。デスクトップ環境のリーディングシステムは、可変ウィンドウが前提で、ウェブブラウザと同じです。読者が読みやすいようにウィンドウの大きさを自由に調整することができます。ただし、1行を適切な文字数にするため、ウィンドウを狭めるというのは、(せっかく広いデスクトップなのに)もったいないと感じる人が多いのではないでしょうか。

Adobe社は、2007年6月19日に「Adobe Digital Editions 1.0」をリリースしました(ベータ版がリリースされたのは2006年10月24日)。当時は、「PDF(インタラクティブPDFを含む)とXHTMLベースのeBookフォーマットに対応」と記されていましたが、後者のフォーマットは現在のEPUBです。つまり、プリントレプリカ(PDF)とリフローコンテンツ(EPUB)をサポートしたリーディングシステムが、4年以上前に提供されていたことになります。雑誌はあきらかにプリントレプリカが適しており、「じっくり読ませる」文芸書などはリフローコンテンツが優れているわけですから、この2つの形式をサポートしていれば、大半の電子書籍・電子雑誌に対応できるということです。Adobe InDesign CS3には、Digital Editions形式(つまりEPUB)のエクスポート機能が搭載され、電子書籍の制作環境も整えていました。

レプリカとリフローコンテンツ2つに対応させる

余談ですが、このときAdobe社で中心的に動いていたのは電子出版事業部ゼネラルマネージャーのビル・マッコイさんでした(現在、IDPFのエグゼクティブディレクター(専務理事)です)。

さて、ここで前述した「大きなスクリーンでリーダビリティが低下する」リフローコンテンツの問題に戻りましょう。最も効果的な対策は「段組み表示に切り替える」機能をリーディングシステム側に実装することです。Adobe Digital EditionsがサポートしたEPUB(当時はバージョン2)には、レイアウトに関する仕様は含まれていません。もし、そのような高度な仕様があってもInDesignのエクスポート機能に反映するのはかなり難しいはずです。結果、電子書籍の制作コストに影響し、電子化のスピードが落ちてしまうでしょう。

エクスポーター機能に高度な処理は期待できない?

Adobe社は、EPUB2を拡張することで、同機能を可能にしました。「XPGT(XML stylesheet called a page template)」というレイアウト拡張技術です。Digital Editionsは、XPGTを実装することで、EPUB2のデメリットを補い、可読性を向上させました。これは、電子書籍元年と呼ばれた2010年より前のことです。Digital Editionsのウィンドウを最大表示にして、文字サイズを下げてみましょう。自動的に段組み表示に切り替わるはずです。実は、Digital Editionsだけではなく、Kindle for PC(およびKindle for Mac)やMobipocket Reader Desktopなど、デスクトップ環境のリーディングシステムはXPGTと同等の機能を搭載しています。

独自拡張で問題を解決.

アドバンスドレイアウト

テキストが主体の文芸書などは「リフローコンテンツ」、レイアウト構造が壊れると媒体の価値が低下してしまうような(再現性を重視しなければいけない)雑誌は「プリントレプリカ」が適しているわけですが、この2つの利点をあわせたハイブリッド技術もあります。シャープが開発したXMDF3.0などが代表的な技術です。

リフローコンテンツでは、図版と文章をセットで表示したくても、スクリーンの大きさによって表示可能な情報量が異なるため、意図したとおりに表示されません。特にスマートフォンなどの小さなスクリーンでは、図版が次のページに送られてしまい、大きな空白ができてしまうことがあります。XMDF3.0には、図版を固定する機能がありますので、文字サイズが変わって情報量が増減しても図版は表示されたままです(ページをめくっても図版は固定されています)。

XMDF3.0はこの領域では最先端

レイアウト構造を保持したまま、リフロー処理を生かす手法を「アドバンスドレイアウト」と呼びます。プリントレプリカの電子雑誌には、記事部分のみリフロー処理で表示するハイブリッドコンテンツとして作られているものがあります。雑誌のページをそのまま再現していますが、記事を読むときにはリフロー処理されたテキスト画面に切り替えることができる仕組みになっています。タブレットやデスクトップのスクリーンでは、プリントレプリカの表示で読み、スマートフォンでは記事をリフローコンテンツに切り替えて読むという使い分けが可能になります。現時点では、電子雑誌のベストプラクティスといってよいかもしれません。

アドバンスドレイアウトの利点

アドバンスドレイアウトは、さらに高度化しており、レイアウトが破綻しないように(デバイスのスクリーンに)適応する、最先端のデザイン手法と捉えてよいでしょう。再現性と可読性の両立なら、ハイブリッドコンテンツで十分かもしれませんが、アドバンスドレイアウトの可能性は、コンテンツのモジュール化にあります。読者によって記事を入れ替えたり、特定の記事をソーシャルメディアで共有可能にするなど、ネットでしか実現できないアイデアを具現化できる可能性があります。つまり、既刊本の電子化が「主」ではなく、ウェブコンテンツとして、まったく新しい雑誌の構築を目指しているわけです。

電子書籍・電子雑誌のモジュール化

次号に続きます。
EBBOKSTRATEGY 2012/2/1
境祐司
Twitter: @commonstyle

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Podcastを配信しています

電子書籍メディア論のPodcastを配信しています。iTunesで「境祐司」を検索してください。サルのアイコンが、Podcastの番組です。Androidのスマートデバイスで聴く場合は「Pocket Casts」をお奨めします。Androidマーケットで購入できます(170円です)。詳しくは、Podcastのブログをご覧ください。
https://ebookstrategy.wordpress.com/

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更新日:2012年2月2日

2件のコメント コメントを投稿
  1. 2月 3 2012

    「タブレット電話」Galaxy Noteは成功するか−【私の論評】大きな電話、小さなタブレットは必要か?

    こんにちは。タブレット電話というか、電話としては大きい、タブレットとしては小さい「Galaxy Note」が発表されました。私は、これは、ノマド系の営業畑の人には本当に良いガジエットになるのではないかと期待しています。いずれにせよ、大きな電話、小さなタブレットは、ニッチな製品になるとは思いますが、ニッチな人々に絶大に支持される製品になると思います。このニッチな人々がオピニオンリーダーとなり市場を広げていくことになるかもしれません。意外と電子書籍を読むにも良いかもしれません。詳細は、是非私のブログを御覧になってください。

    返信する
  2. とても大切な考察だと思います。
    実務(主にXMDFですが)ばかりやっていると、他の方式に疎くなる、というか狭視的になってしまいますので。
    勉強になりました。

    返信する

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